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バターの輸入

輸入品のバターを食べたことがあるだろうか? 私は以前、フランスのノルマンディー地方で生産されるイズニーバターと言うのを食したことがある。非常に口溶けがまろやかでクリーミーな感じだった(なんか月並みな表現しか思い付かないが…)。フランスのバターは、ワイン等と同じようにAOCで格付けがなされていて、AOC製品には厳しい製造基準が求められている。しかし、日本では高価でもあり非常に入手しにくい。それはなぜか。日本政府が懲罰的とも言える関税障壁を設けて輸入を阻止しているためである。

ガット-ウルグアイラウンドで、バターや脱脂粉乳などの乳製品は、毎年最低限輸入する量が決められた。生乳換算で137,000トンを輸入することが決められている。この中からバターの輸入にどのくらい割かれるかは農水大臣が決めることになっている。これをカレントアクセス(CA)と呼ぶ。このCAの関税は一律35%という事になっている。私が食したイズニーバターはこうして輸入された物かと思いきや実はそうではない。CAによって輸入したバターはその用途が厳しく制限されており、

・国際的な規模で開催される見本市(博覧会、共進会その他これに類するものを含む。)
 における販売
・沖縄県の区域内における還元乳の製造、沖縄県の区域内の乳児その他の農林水産大臣が
 指定する者の飲用に供するための調製粉乳の製造
・本邦と外国との間を往来する航空機用

という用途に消費すること以外は認められていない。普通に市場に出回ることはないのである。それではCA以外に輸入するにはどうするかと言うと、「独立行政法人農畜産業振興機構」というところに輸入者登録を行い、「指定乳製品等の売渡・買戻申込書」(こんなもの)なるものを提出しなければならない。しかも担保まで取られる。そして、現在は暫定税率である29.8%+179円/kg(または+210円/kg:脂肪分の%による)の関税を払って輸入したバターはすべてこの「機構」に売り渡さなければならない決まりになっている。その上806円/kg(または949円/kg:脂肪分による)の「マークアップ徴収」という法外な金額を上乗せされた料金で再度買い取らされるのである。以前、小麦の輸入で書いたのと同じ手口である。つまりは29.8%+985円/kg(または1,159円/kg)というのが最終的な「関税」となる。この29.8%+985円(1159円)/kgというのはWTO協定で定められた実効関税率にほかならない。平成20年は14,280tのバターを買い取ったことになっている。つまりこの「機構」にはざっと115億円の金が搾取されたことになる。この搾取されたお金は、小麦などと同様に酪農家の補助に回る仕組みになっているが、半分くらいはこの「機構」の人件費に当てられるそうである。

価格が高いためそうそうイズニーバターは買えないのだが、ある時期全く入手不能になったことがあった。おりしも国内でバターが不足していた頃のことなので品薄で入手できないのかと思いきや、品薄解消のためにバターの緊急輸入をしたために、規定の輸入枠を超えてしまい、セーフガードが発動されたためだった。セーフガードが発動されると、更に9.9%+328.33円(386.33円)/kgという関税が上乗せされ、合計すると39.7%+1,313.33(1,545.33)円/kgという死にたくなるような関税となる。全くアホかと言いたくなる。民主党は、農家に対する直接補償に切り替えるとマニフェストで謳っている。直接補償と言うのは関税の撤廃や縮小、輸入枠の撤廃などとセットで実施しなくては意味が無い。民主党は本当にそこまで踏み込んだことが出来るだろうか? もちろん、この「機構」は廃止ですな。
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夜行虫とは天体撮影等、夜に出歩くのが多いことから名づけました。夜光虫の誤変換ではありません。海に潜ったり温泉浸かったりも趣味です。

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